記事 Wen Huang/『Rotary』誌
2022年規定審議会の初日、各国の代表議員は「公平さとインクルージョン」を国際ロータリー細則に加える案件を圧倒的多数で採択し、あらゆる文化、経験、アイデンティティの人のインクルージョン(包摂)および地域社会を反映させる取り組みを組織として継続していくことを確認しました。
4月10~14日にシカゴ(米国イリノイ州)で4日間にわたって開かれた規定審議会は、新型コロナウイルス流行が始まって以来初めてのハイブリッド式国際会議となり、成功裏に終わりました。世界中のロータリー地区代表議員約520名が出席し、うち60%が対面式、残りがZoomを通じて参加しました。
今回の規定審議会では、RI組織規定文書に変更を加える90件以上の制定案が審議、投票されました。
中でも注目された案件の一つに、バランスの取れた会員基盤を築くための多様性の推進があります。この制定案(インド[第3232地区]、Annanagar Aadithyaロータリークラブにより提案)が420対56の大多数で可決されたことにより、改正後の国際ロータリー細則には次の文章が含まれることとなります:「各クラブとローターアクトクラブは、多様性、公平さ、インクルージョンを推進するような均衡のとれた会員構成を構築するよう努めるものとする」。ロータリーは、ジェンダー、人種、肌の色、信条、国籍、性的指向によりクラブへの入会を拒否することを禁じています。
RIの多様性・公平さ・インクルージョン(DEI)タスクフォース委員長であるバレリー・ウェイファー氏は次のように述べます。「これは、ロータリーが会員基盤の成長と多様化を組織内部の最優先事項としたことを意味します。クラブの仲間から温かく迎えられ、居心地がよいと感じられることが、会員の満足と維持にとって一番重要なことです」
ウェイファー氏はさらにこう加えます。「公平さを追加したことで、ロータリーは、誰もが快適で貴重な体験ができるように、いかにしてさまざまなレベルの支援、機会、リソースを提供できるかを真剣に考えることになります。また、インクルージョンを追加したことで、すべての人が歓迎され、尊重され、大切にされる体験をつくりだすことに注力できます」
クラブ管理の試験的プロジェクト
今年の規定審議会の共同議長を務め、連邦判事でもあるデュエーン・ベントン氏(カンザスシティ・ロータリークラブ会員)は、今回提出された複数の案件を特徴づけたのは、クラブとロータリー全体の柔軟性を高める取り組みを反映していた点であったと述べました。
クラブとロータリアンのための新たな地域別ガバナンス構造をRI理事会が試験的に実施することを可能とする制定案については、活発な討論が行われ、324対150で可決されました。
この試験的プロジェクトは、グレートブリテンおよびアイルランドのロータリー(RIBI)およびオーストラリア、ニュージーランド、南太平洋諸国のクラブと地区に限られ、その期間は6年となります。
この立法案の共同提案者であるRI理事会とMerimbulaロータリークラブ(オーストラリア、第9705地区)は、現在のガバナンス構造が70年以上前に作られたものであり、非常に多くの階層と役割を伴う「大きな序列構造」に膨らんでいることを指摘。「ロータリーの効率性を高め、会員がサポートを得やすくなるようにし、会員が務める役職の意義を高め、かつ実行可能なものとする新しい方法を模索するために、現代的な新しいモデルを検討することが適切」と、RI理事会を代表して発言したウェイファー氏は話します。
この制定案に反対した代表議員は、この計画が具体性を欠いていること、また、地区数が減ることにより地区ガバナーの存続が危うくなる可能性があると主張しました。第3490地区(台湾)からのある代表議員は、この計画によりロータリークラブの自律性が変化し、一元的なガバナンスにつながり、各地域に即した管理運営が少なくなるという可能性を懸念しました。
これに対しウェイファー氏は、試験的プロジェクトの実施中に地区とガバナーの役割がなくなることはないと強調し、6年間の試験によって既存モデルに戻す必要があるという結果が出た場合には、地区ガバナーの役職はそのまま残されると述べました。
「これは新しいガバナンス構造を強制的に押し付けるものではありません」とウェイファー氏。「むしろ、将来を持続可能とするために地区と協力しながら、何が機能し、何が機能していないかを見定めようという試みです」
人頭分担金の増額
代表議員は、今後3年間の各年度の人頭分担金の増額を承認しました。クラブがRIに支払う人頭分担金は、2022-23年度には半年ごとに35ドル50セントであり、その後、2023-24年度には半年ごとに37ドル50セント、2024-25年度には半年ごとに39ドル25セント、2025-26年度には半年ごとに41ドル00セントに増額します。
「この人頭分担金の調整は、最近の財務見通しの情報に基づいています」とRI理事のエリザベス・ユーソビッチ氏は述べ、会員の減少、収入の減少、インフレの変動がこの増額の要因であることを指摘しました。「この案件が承認されれば、ロータリーは人道的ニーズに迅速かつ思いやりある対応ができるようになります」
ロータリーの雑誌購読
ロータリーには現在、世界各地に33の雑誌があります。会員が雑誌の印刷版を要請しない限りデジタル版での購読を義務づけるという制定案は、代表議員によって否決されました。
現在、すべてのロータリー雑誌は、デジタル版購読を希望する読者のための選択肢を設けることが義務づけられている、とアナンサナラヤナン S. "ベンキー" ベンカテシュRI理事は述べます。しかし、購読者データによると、デジタル版を選択している人は8%にすぎず、大多数は印刷版の購読を希望しています。さらに最近の調査では、会員の70%近くが紙の本や雑誌を読んでいると回答しました。
ロータリー雑誌は、出版費用とのバランスをとりながら、より環境に配慮した方法を模索しています。
ウクライナへの総立ちの拍手
シェカール・メータRI会長は、4月12日のセッションで、ウクライナのリヴィウ市から出席した代表議員、ヘナディ・クロイチック氏を紹介しました。同氏は、戦争で破壊された同国を離れ、審議会に出席するためにはるばるシカゴにやって来ました。「クロイチックさんは、ウクライナで起こっている悲劇にもかかわらず、ここにいらっしゃいました。私たちは、あなたとウクライナと共にあることを忘れないでください」とメータRI会長は述べました。
「非常に厳しい状況の中で職務を果たし、ロータリーへのコミットメントを身をもって示した」(メータRI会長)クロイチックさんに、場内の出席者から総立ちの拍手が送られました。
電子的な方針作成
「2022年規定審議会では前例のないことが行われました。Zoomを通じて全大陸から代表議員約200名が審議に参加しました。時差があったにもかかわらず、議論を行い、その場にいるかのように投票を行いました。これは、電子的な方針作成の最高のかたちといえます」とベントン議長は述べます。「この達成は、対面式とハイブリッド式の両方で審議会ができることを示しています」